The Actress

Posted on by tachimotoru

神山の”裏ボス”と呼ばれる美容師のさっちゃんこと港幸子さん。表題を「Actress」としたのには理由がある。彼女は数年間に「復活」した地元演芸場「寄井座」の看板女優だったのだ。

一日二箱というがそれ以上に思われる吸ってはつけられるタバコの数々。そのくゆられる煙を見ていると、彼女がジャンヌ・モローに見えてくる。いや、むしろそれ以上の存在感だ。美容師というのは表の顔。石材屋の女房にして、スナックの経営者。多くの弟子を抱える神山のフィクサー。

彼女に逢って、僕の映画は大きく揺さぶられることになる。なぜか僕にだけ、彼女が話してくれた話がある。なぜなんだろうか。それを考えているが、答えが出てこない。彼女とその秘められたドラマこそ、僕がこんな山奥まで「たちもとおってきた」理由であると痛切に、そして瞬時に感じた。

ここから先は映画の醍醐味に関わることなので、今はまだ明かすことはできないが、ドストエフスキーの小説のような人間の愛憎ドラマがここにはある。そして戦前、戦中、戦後、バブル期、バブル後をつなぐある壮大な家族物語の原型が、垣間見えたように思えた。

レヴィストロースは、ツギハギされた物語の集積物を「神話」と定義したように記憶しているが、これはまさしくある種の神話であり、「今かたるべきもの」なのだ。

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