ハンドメイドとレディメイドの間:Handmade / Readymade #1 “Geometrical House”
大量生産品でもなく、完全な一点もののいわゆるハンドメイド的な商品でもない、一点一点しっかりと作り込まれ、しかも定番品として作られる続けるプロダクト。そんな商品にフォーカスを当てた展示会が表参道のショップPASS THE BATONにて開催された。この企画展の企画/キュレーションを行った千原航さんにお話を伺った。
Q:どういった経緯で今回の展示会を開催されようと思ったのですか?
2-3年前からOre(バッグ)、山口奈那子さん(陶器)、nir(靴)をあわせて見せる展示をやりたいなと思っていて、それぞれにプランを話していました。これら3つのブランド/作家は全員、自宅で制作を行っていますが、ハンドメイド物でありながら、工業品/既製品レベルの完成度を感じます。“ほころび”や“味”というものを極力消そうとしているようにもみえます。さらにどのモデルも充分個性的です。デザイナー本人が制作を楽しんでいるのが伝わってくるんですよね。つまり「実用品なので均一した品質を保つ」という意識から、個々の制作技術を高めることになり、その結果可能となった「表現の独自性」がカップリングされているように感じるんです。
実用的で個性的。ジャンルは違えどグラフィカルで幾何学模様的なデザインの共通性がある。それらをあわせて展示することで、各プロダクトの魅力を相互に引き立てあうような展示の提案ができないかな?と考えました。「自分が魅力を感じるプロダクトを紹介したい。同時に他の人に興味を持ってもらえるか知りたい」という使命感と興味が原動力です。
なるべく幅広い層の人の目に留まる会場での展示を考えていた時に、表参道ヒルズにあるPASS THE BATONギャラリーで何かやりませんか?という声をかけていただき、実現した企画です。
Q:今回は千原さんご自身も各ブランドと一緒にプロダクトの制作をされたり、会場ではオリジナルの映像を上映するなど展示としてもいろいろと面白い試みをされていますよね。
こういったモノを売ったり発表する場所として「個展」「展示会参加」「お店」「web」など色々ありますが、新しい見え方のする展示方法を提案してみたかった、というのが大きいです。展示即売会でもなく、合同見本市でもないもの。インスタレーションでも、店内ディスプレイでもないものを。企画者である自分も「選ぶだけ」ではなく「それぞれと一緒に何かを作る」ところまでやる。さらに 「モノのPV」を制作することで展示空間や構造に奥行きを持たせたい。週末には、制作過程で出た試作や不要品を全く別の実用品に作り替えるワークショップを開催する……正直、詰め込みすぎだと思います(笑)しかし、企画としても、参加する作家/ブランドの姿勢や柔軟性を伝えるためにも、これくらいの要素を混ぜて成立させる必要性を強く感じていました。
このようにジャンルで区切るのではなく、距離感でまとめるというのは、企画者でありセレクトをする自分に当然責任が降り掛かかってきます。今回選んだものや共同で作ったものが、来場者に伝わり、楽しんでいただける空間なのか?そして実際に商品をお買い上げいただけるのかどうか?がリアルな指針となります。「作品」ではなくて「実用品」なので、誰かの生活に加わってからがスタートラインです。その手前までは、自然かつ全力でエンターテインメント性ある出会い方を演出したかったんですね。
Q : では、今回制作した商品について教えていただけますか?
今回それぞれのブランドと共同制作したものがあります。僕がリクエストやアイデアを伝え、それを受けてブランドが解釈し、お互いに相談を繰り返しながら制作したものたちです。
山口奈那子:レースレリーフシリーズ(カップ、湯呑み、花器、ブローチ)
陶芸家。1978年愛知県生まれ。02年東京芸術大学陶芸専攻卒業。04年より陶芸活動再開。国内外で個展、グループ展多数。
一番最初に山口さんの作品を見たのが「レース模様の真っ白い陶器」でした。甘すぎない品があるデザインで、繊細なレースと硬質な陶器の組み合わせが好みでした。今回はレース模様自体をオリジナルで起こし、カップと湯呑みは底や内部にもレリーフが浸食していくデザインになっています。底の跡をつけても怒られない(笑)
また、破片をつなぎあわせて花器にしたもの、破片をそのままブローチにしたものも、パンクでエレガントな仕上がりになっています。
Ore:shoppingBUG(ショッピングバグ)
98年設立。サッカーボールバッグをはじめ日常的なモチーフと独創的なデザインが人気のバッグブランド。
コットン製のシンプルなショッピングバッグの一部が変型しているので、ショッピング〈バグ〉です。バッグ本体が「一辺が曲面(レコードが20枚入り ます)」「一辺が斜面」のモデルは、その向きを回転するだけで、全く表情の違うバッグとなります。また「バッグ本体が小さく、持ち手が長すぎる/太すぎる」モデルもあります。複数を重ねて使用しても、おもしろい見え方になると思います。これらのデザインを中古生地を使用して制作したものもあります。
nir:usedデニムルームシューズ
革やデニム、ペンキなどを使い、その時々のインスピレーションを柔軟に生かしながらハンドメイドで制作する靴ブランド。
usedデニムを素材としたバブーシュ(モロッコのスリッパ)です。左右同じ向きの家のかたちをしたパッチワーク、ポケット裏地を使用した中面、ロゴが刻印された革にリベットを使用するなど、usedデニム素材を解体→再構築したものです。
元々制作していたモデルでusedデニム使用のブーツがあるので、パンプスもusedデニムバージョンでの制作を依頼しました。ブーツ、パンプス、スリッパとusedデニムのシリーズとして見えるようにディレクションしました。
手作りと大量生産の間にあるのは、実用的じゃないと使いたくない、かっこいいデザインじゃないと持ちたくない、そんな贅沢でもあり、当然でもある欲求にちゃんと答えてくれる商品の数々でした。千原さんありがとうございました!

Koh Chihara presents
Handmade/readymade #1 “Geometrical House”
会期:2010年11月19日~12月5日
企画+キュレーション+アートディレクション:千原航(http://www.kohchihara.com)
参加ブランド:Ore(http://www.orehandmadebag.com)、山口奈那子、nir(http://www.nirintheinter.net)
映像:onnacodomo(http://www.onnacodomo.com)
協力:loosejoints (http://www.loosejoints.net)
協賛:コニカミノルタ(http://www.konicaminolta.jp)
開催:PASS THE BATON OMOTESANDO(http://www.pass-the-baton.com)






